味噌、みりん、キムチ、梅シロップ、山椒の保存食。
どれも、今はお店で買うことができます。
スーパーに行けば、たくさんの商品が並んでいますし、ネットで探せば、こだわりのあるものも簡単に手に入ります。
だから、
「わざわざ自分で作らなくてもいいのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
本当にその通りです。
買えば済みます。
忙しい毎日の中で、わざわざ時間をかけて、材料をそろえて、手を動かして作る必要はないのかもしれません。
けれども、買えば済むものを、あえて自分で作ってみると、そこには「買う」だけでは味わえない面白さがあります。
材料が見える安心感
自分で作ると、何を使っているのかがよくわかります。
味噌なら、大豆、米麹、塩。
みりんなら、もち米、米麹、焼酎。
梅シロップなら、梅と砂糖。
キムチなら、野菜、塩、唐辛子、にんにく、しょうが、魚醤やアミの塩辛など。
市販品の原材料表示を見れば、何が入っているのかはわかります。
でも、自分の手で材料を量り、触り、香りを確かめながら作ると、ただ文字で見るのとはまったく違います。
「これが味のもとになるんだ」
「この香りが発酵すると変わっていくんだ」
「こんなにシンプルな材料でできるんだ」
そんな発見があります。
材料が見えると、食べるときの感じ方も変わります。
いつもの味噌汁も、自分で仕込んだ味噌を使うと、それだけで少し特別に感じられます。
自分の好みに合わせられる
市販品は、誰が食べてもおいしいように作られています。
それはとてもありがたいことです。
でも、自分で作ると、もう少し自由になります。
甘さを控えめにする。
辛さを自分好みに調整する。
塩気を少し強めにする。
熟成期間を長くして、深い味にする。
キムチなら、辛いのが好きな方は唐辛子をしっかり入れてもいいし、辛いものが苦手な方は控えめにすることもできます。
梅シロップも、使う砂糖によって風味が変わります。
みりんや味噌も、材料や熟成期間によって、出来上がりの味が変わります。
自分で作るということは、正解の味を目指すことではありません。
自分の家の味を作っていくことです。
市販品のように毎回同じ味にはならないかもしれません。
でも、その少しの違いも、自分で作る楽しさのひとつです。
熟成や変化を待つ楽しみ
発酵食や保存食は、作ったその日に完成するものばかりではありません。
味噌は、仕込んでから何ヶ月もかけて熟成していきます。
みりんも、時間をかけることで、甘みと旨みが育っていきます。
梅シロップは、梅から少しずつエキスが出て、砂糖が溶けていきます。
最初はただ材料を入れただけだったものが、日ごとに変化していく。
その様子を見るのは、とても楽しいものです。
「今日は少し水分が出てきた」
「香りが変わってきた」
「色が濃くなってきた」
そんな小さな変化に気づく時間があります。
すぐに結果が出るものが多い時代だからこそ、ゆっくり待つものが家の中にあるのは、なかなかよいものです。
完成を待っている間も、もう楽しみは始まっています。
仕組みがわかると、料理がもっと面白くなる
自分で作ってみると、
「なぜこうなるのか」
が少しずつ見えてきます。
なぜ味噌は熟成すると色が濃くなるのか。
なぜ麹を使うと甘みや旨みが出るのか。
なぜキムチは時間が経つと酸味が出るのか。
なぜ梅と砂糖を合わせるとシロップができるのか。
ただレシピ通りに作るだけでももちろん楽しいのですが、仕組みがわかると、さらに面白くなります。
うまくいった理由も、少し失敗した理由も、見えてくるようになります。
すると、次に作るときに工夫できるようになります。
料理が「作業」から「実験」のようになっていきます。
難しい知識が必要なわけではありません。
実際に手を動かしてみることで、自然とわかってくることがたくさんあります。
買ったものより、自分で作ったものはよく使う
不思議なことに、自分で作ったものは、冷蔵庫や棚の中にあるだけで気になります。
「そろそろ使おうかな」
「今日はこれを料理に入れてみようかな」
「この前仕込んだもの、どうなっているかな」
そんなふうに、日々の料理の中で思い出します。
味噌を仕込むと、味噌汁を作りたくなります。
梅シロップを作ると、飲むだけでなく、ドレッシングやたれにも使ってみたくなります。
山椒の醤油漬けがあると、冷奴や焼き魚に少しのせたくなります。
みりんを作ると、煮物や照り焼きに使うのが楽しみになります。
自分で作ったものは、ただの調味料ではなくなります。
「育てたもの」
「仕込んだもの」
「自分の手を通したもの」
になります。
だから、使うたびに少しうれしいのです。
失敗も、実は面白い
もちろん、自分で作ると、思った通りにならないこともあります。
味噌の色が想像より濃くなった。
キムチが酸っぱくなった。
梅シロップの砂糖がなかなか溶けない。
ぬか床が水っぽくなった。
山椒の下ごしらえが思ったより大変だった。
市販品なら、安定したものが手に入ります。
でも、自分で作ると、季節や気温、材料の状態、自分の手入れの仕方によって変わります。
それを面倒と思うこともできます。
けれども、そこが面白いところでもあります。
うまくいかなかったときに、
「なぜこうなったのかな」
「次はどうしたらいいかな」
と考える。
それも、自分で作るからこその学びです。
失敗しないことよりも、変化に気づいて、整えられるようになること。
発酵食や保存食作りには、そんな面白さがあります。
教室で作るよさ
自分で作る楽しさはありますが、最初の一歩は少し不安かもしれません。
これで合っているのかな。
この状態で大丈夫なのかな。
材料はどれを選べばいいのかな。
どのくらい待てばいいのかな。
本や動画を見れば作り方はわかります。
でも、実際の手触り、香り、状態の見方は、画面越しではわかりにくいことがあります。
教室では、その場で材料に触れながら、実際に仕込んでいきます。
わからないことは、その場で質問できます。
同じものを作っていても、参加者さんによって感じ方が違うのも面白いところです。
そして、あみだす発酵アカデミーでは、仕込んで終わりではなく、作ったものを日々の料理にどう使うかも大切にしています。
せっかく作った保存食や発酵調味料を、棚にしまったままにしない。
毎日のごはんに使ってこそ、作る楽しさが続いていきます。
買う暮らしと、作る暮らし
買うことが悪いわけではありません。
私も市販品を使います。
忙しいとき、すぐに使いたいとき、安定した味がほしいとき、市販品はとても頼りになります。
でも、ときどき、買えば済むものをあえて作ってみる。
それだけで、いつもの食卓の見え方が少し変わります。
味噌汁を飲むとき。
キムチを食べるとき。
みりんを料理に使うとき。
梅シロップを水で割るとき。
山椒を少し添えるとき。
「これは、こうやってできているんだ」
と知っているだけで、食べることが少し豊かになります。
あえて作る時間を楽しむ
買えば済むものを、あえて作ってみる。
それは、効率だけで考えると、少し遠回りかもしれません。
でも、その遠回りの中に、
材料を選ぶ楽しさ
手を動かす楽しさ
変化を待つ楽しさ
味を育てる楽しさ
食卓で使う楽しさ
があります。
完成品を買うだけでは見えなかった世界が、自分で作ることで少しずつ見えてきます。
味噌も、みりんも、キムチも、梅シロップも、山椒の保存食も。
どれも、買うことはできます。
でも、自分で作ってみると、ただの調味料や保存食ではなくなります。
季節を感じるもの。
暮らしの中で育っていくもの。
自分の味になっていくもの。
そんな存在になります。
買えば済むものを、あえて作ってみる。
その面白さを、ぜひ一度体験してみてください。
